『La bola negra』が観客賞 サンセバスチャン映画祭、投票者と賞金の行き先
第74回サンセバスチャン映画祭の観客賞は、ハビエル・カルボとハビエル・アンブロッシ共同監督の『La bola negra』に決まった。作品紹介だけでは分かりにくいPerlak部門の投票対象、2種類の観客賞、賞金を受けるスペイン配給者を公式資料で確かめた。日本での公開予定は現時点の参照資料から確認できない。

第74回サンセバスチャン映画祭が2026年9月26日に公表した観客賞の受賞作は、ハビエル・カルボとハビエル・アンブロッシ共同監督の『La bola negra』だ。この結果を公式競争部門の最高賞と同じ審査員による決定として読むと、賞の仕組みを取り違える。今回の賞はPerlak部門の上映作品を対象に、上映に来た観客の票で決まる制度だ。日本語の読者が映画祭の受賞一覧を読む際に必要な、投票者、対象作品、賞金の行き先を公式資料から確認した。
映画祭の観客賞案内は、Perlak部門のすべての作品を候補とし、各作品の最初の一般向け上映に来場した観客が選ぶと説明する。『La bola negra』の公式作品目録も所属部門をPerlakと記す。会場での観客投票という意味であり、世界中の誰でもインターネットから投票できる賞ではない。規則の詳細や集計の全過程が公表されているわけではないため、票数や得票率を推測することもできない。
観客賞には最優秀作品賞と、最優秀ヨーロッパ映画賞の二つがある。『La bola negra』が選ばれたのは前者で、後者の受賞作はユバル・アブラハムとラヘル・ショル監督の『NAZA』だ。映画祭の受賞表は両作品を別々の行に載せる。スペインとフランスの共同製作である『La bola negra』が前者を受けたことを、ヨーロッパ映画賞も同時に受けたと読み替えることはできない。
賞金の制度にも注意が必要だ。公式説明では最優秀作品賞は税引き前5万ユーロ、最優秀ヨーロッパ映画賞は同2万ユーロ。観客賞の賞金はスペインでの当該映画の配給者に向けられる。したがって5万ユーロを両監督の個人賞金と断定するのは誤りだ。作品目録はスペインでの配給欄にElastica、国際販売欄にGoodfellasを挙げるが、これらの欄も役割が違う。公開資料は個別の支払いが完了した日や税引き後の受領額を示さない。
映画祭サイトに掲載された候補作の評価一覧では、『La bola negra』の横に9.40という数字が示される。ただしその表示だけでは投票人数、回答率、集計方法の細部までは分からない。数字を全国的な世論調査や全観客の総意のように扱わず、映画祭の観客賞ページが示すスコアとして読むのが適切だ。受賞の事実は9月26日付の公式発表と結果表でも確認できる。
作品目録によると、映画はスペインとフランスの共同製作で159分。原語はスペイン語、英語、イタリア語と記される。カルボとアンブロッシに加え、アルベルト・コネヘロが脚本に名を連ねる。公式あらすじは、異なる三つの時代に生きる三人の男性が、欲望、痛み、継承を通じて結びつく物語と紹介し、フェデリコ・ガルシア・ロルカの未完の作品に触れる。これは主催者が提示した筋立てであり、本編を鑑賞した筆者による批評ではない。
出演欄にはギタリカデルアフエンテ、ミゲル・ベルナルデアウ、カルロス・ゴンサレス、ロラ・ドゥエニャス、ペネロペ・クルス、グレン・クローズらが並ぶ。カタログから出演者と製作・流通の基本情報は確認できる一方、各人物の役柄、作品内での比重や演技の評価は判断できない。観客賞を得たという結果から、全出演者に賞が授与されたと拡大解釈することも避けたい。
日本での劇場公開、字幕付き上映、配信開始については、参照した映画祭の受賞表と作品目録には決定情報がない。スペインの配給欄や国際販売会社の記載は、日本での配給契約を示す資料ではない。鑑賞機会を知るには国内の配給元や上映館の発表を待つ必要がある。掲載写真は両監督が2026年カンヌ映画祭に参加した際の資料写真で、サンセバスチャンの観客賞発表場面を撮影したものではない。
프리즘코리아 편집국 > 小川美緒



