『Growth of the Soil』撮影賞は誰に サンセバスチャン映画祭の受賞と制作体制
第74回サンセバスチャン映画祭で『Growth of the Soil』のオスカル・ダールスバッケンが最優秀撮影の審査員賞を受けた。公式規則、受賞表、作品目録を照合し、主演演技賞との違い、共同製作と販売・配給の記載、公開資料からは分からない受賞理由や日本公開状況を整理する。

第74回サンセバスチャン映画祭は2026年9月26日、ノルウェーの撮影監督オスカル・ダールスバッケンに『Markens grøde / Growth of the Soil』の撮影賞を授与した。公式受賞表での名称は「審査員賞・最優秀撮影」。作品が受けた賞を監督賞と取り違えると、映像を担った人への評価が見えなくなる。ハンス・ペッテル・モーランドは本作の監督だが、今回の撮影賞の受賞者として記されているのはダールスバッケン個人である。
この賞は公式競争部門の審査員が選ぶ6つの定例賞の一つだ。映画祭の規則には作品賞の金貝殻賞、監督賞、主演・助演の演技賞、撮影賞、脚本賞が並ぶ。2026年の公式審査員団はアイラ・サックスを委員長とし、日本の映画監督・作家、川村元気も加わった。撮影賞は別部門の観客投票で決まる賞ではない。ただし公開資料だけでは、どの場面や技法が審査で評価されたか、個々の委員の意見までは分からない。
同作は撮影賞だけで結果表に登場したわけではない。出演者アスタ・カンマ・アウグストが最優秀主演演技の銀貝殻賞をケイト・オフリンと同時受賞した。前者は俳優の演技への賞、ダールスバッケンの賞は撮影への賞で、対象となる仕事が違う。映画祭の受賞一覧を読む際、作品名が二度現れることを「作品賞を二つ獲得」と短絡させず、受賞者と部門を分けて示す必要がある。
公式作品目録は、撮影をダールスバッケン、編集をリンダ・マン、音楽をカスパー・カーエ、録音・音響をギスレ・トヴェイトと記載する。長編の映像と音を支える役割をそれぞれ別欄に置いた情報であり、撮影賞を編集や音楽の受賞に広げることはできない。監督と脚本の欄にはモーランドの名前があり、脚本にはガルド・B・エイズヴォルドも併記される。クレジットの確認は、授賞の対象を制作体制の中で正しく位置づける手がかりになる。
作品はノルウェー、デンマーク、ドイツの共同製作で、上映時間は155分。公式カタログでは製作にノルウェーの4 1/2 Fiction AS、共同製作にデンマークのScanbox ProductionsとドイツのNadcon Filmを挙げる。一方、国際販売はドイツのBeta Cinema、スペイン配給はA Contracorriente Filmsと別々に掲載される。製作国の表示と、映画を各国の観客へ届ける契約は同じ情報ではない。日本での配給会社や公開日が決まったと、この目録から読み取ることもできない。
映画祭が示すあらすじでは、過去を持たない男イサクが山地に住みつき、厳しい土地を耕す。インゲルと出会い、季節を重ねながら家族と暮らしを築く物語だ。作品の原語はノルウェー語とスウェーデン語と記されている。この筋立てや言語の情報は鑑賞前の案内として有用だが、土地の風景が画面上でどう表現されたかを具体的に論じるには、本編の確認が必要になる。撮影賞の受賞から、特定のショットや使用機材を想像して説明することは避けたい。
日本語の読者にとっても、受賞名の訳し方は重要だ。「最優秀撮影」は静止写真への賞ではなく、映画の映像撮影を担う職能に対する部門名である。ただし作品目録は撮影監督のクレジットを示すだけで、撮影形式、カメラのメーカーや現場での分担を詳述していない。制作過程や受賞理由について、新たな監督・撮影監督の発言が確認できれば評価の背景をより具体的に伝えられるが、現段階の公表資料が証明する範囲は受賞結果と基本クレジットまでだ。
配図を付ける場合、映画撮影用カメラのピント調整を写した2017年の一般的な資料写真を使う。写真の被写体は本作の撮影隊でも2026年映画祭の会場でもない。撮影という仕事の説明に添える参考画像であり、ダールスバッケンの制作現場を示す証拠として扱わない。
프리즘코리아 편집국 > 小川美緒



