秋夕の事故は少なくても人的被害は重い 韓国の二つの指標をどう読むか
韓国道路交通公団の2021~2025年分析では、秋夕連休中の事故は1日平均426件で全期間平均541件より少ない一方、事故100件当たりの死傷者は165.8人と全期間の143.7人を上回った。分母の違い、原因を特定できない資料上の限界、同乗者の備えを日本語の一次資料とともに整理する。

韓国道路交通公団が2026年9月22日に交通事故分析システムTAASへ掲載した資料は、2021~2025年の秋夕連休をまとめている。連休中の事故は1日平均426件で、同じ分析の全期間平均541件より115件少ない。これは該当する日々の事故発生数を日数で割った値だ。「今年の秋夕に426件起きた」という意味ではなく、移動1回や走行1キロ当たりの事故確率でもない。毎年の連休の長さと移動量は別に確認する必要がある。
同じ発表では、事故100件当たりの死者と負傷者の合計が、連休中165.8人、全期間143.7人だった。差は100件につき22.1人で、公団は約15.4%多いと説明する。ここで数えているのは事故の当事者となった人数であり、事故そのものの件数ではない。一つの事故で運転者、同乗者、歩行者など複数人が被害を受け得るため、100件当たりの死傷者が100人を超えても統計上の矛盾ではない。
ただし165.8という値を「旅行者の165.8%がけがをする」「死亡率が15.4%上がる」と言い換えるのは誤りだ。死傷者には死亡者と負傷者の双方が含まれ、発表はその内訳や傷害の重さをこの比較値で示していない。また、車両台数、走行距離、乗車人数をそろえた分母もない。連休中に運転した個人の危険度や、高速道路と一般道の相対的な危険度は、この二組の平均だけから計算できない。
一台の車に乗る人数が多ければ、一度の衝突に関わる人が増える可能性はある。しかし公表された短い分析から、各事故の乗車人数やシートベルト着用状況が被害増のどれだけを説明するかは検証できない。車種、衝突速度、事故の場所、歩行者の関与も結果に影響し得る。家族旅行そのものを原因と決めたり、特定の人々の運転を非難したりする根拠にはならない。
日本の読者に身近な確認事項として、日本自動車連盟(JAF)は後席でシートベルトを着けない場合、後席の人自身が車内や車外に投げ出され、前席の人にも衝突する危険があると、衝突実験で説明している。これは乗員保護の仕組みを示す日本の資料で、韓国の秋夕にシートベルト未着用が何件あったかを示す統計ではない。韓国で同乗する場合にも出発前に全席の装着を確認するという実務的な注意として参照できるが、今回の22.1人という差の原因を特定する資料としては使えない。
比較する日付にも注意したい。TAASの発表は2026年の秋夕前に出たが、集計対象は2025年までだ。2026年の連休について事故が前年より減った、あるいは被害が増えたという結論は、この過去5年間の平均からは出せない。新しい事故記録を用い、連休の日数、移動量、死亡と負傷の内訳をそろえた比較が必要になる。事故を減らす対策と、事故が起きた際のけがを減らす対策は、成果の測り方も分けて評価すべきだ。
公団は出発前の天候・通行規制の確認、十分な車間距離、飲酒後の運転を避けることを呼び掛けている。これらは予防の勧告であり、今回の平均値だけで効果が実証されたわけではない。旅行者は「事故が少ない連休」という見出しだけで安心せず、運転する人と同乗する人の双方の準備を点検したい。掲載写真は2024年の韓国道路の資料写真で、秋夕の事故現場や2026年の交通状況を写したものではない。
프리즘코리아 편집국 > 森川結衣 · Yui Morikawa



